■表現規制の壁
細字=インタビュアー
太字=サックン(監督)
―この企画はあまりに壁が高くて、一時期は発売が危ぶまれたという話を聞いていますが、やはりネックになったのはAVというメディアのせいですか?
はい、すべてエロという部分が問題になりました。この裸の大陸シリーズは、1~3作目までは「ドキュメンタリー性を重視する」という理由で、現地の人達には一切修正を入れてないんです。メディ倫がそれで通してくれていたので。それが4作目の時にちょうど日本のユニセフなどが児童ポルノに対して規制の声を挙げて話題になっていたんですけれども、モロにそれの余波を受けてしまって、現地の人の中で未成年と思われる人や子供達にすべてモザイクを入れなければならなくなりました。それまではOKだと言われていた内容なのに、いきなりメディ倫の基準が変わってしまったんです。
―それは今回のチャリティー作品でも同様なんでしょうか?
はい、それが一番の問題になりました。今回は撮影の3ヶ月も前にメディ倫に「次はAVの他にボランティア活動の模様も撮影しに行く」と伝えてあったんですが、その時にメディ倫の担当者から「それはその時に考えます」としか言ってもらえず、実際に撮って編集して審査を受けたら子供にはすべてモザイク、未成年の疑いのある人物にもモザイクと。
世の動きに敏感でなければならない部分があるのはわかりますが、それにしたって倫理基準というものを、世間の論調に少し変化があったからって急激に変えるというのはおかしいですよ。現に1~3作目まではメディ倫が「それで平気だ」と言って審査を通してくれていたんですから。
―それはボランティア活動をしている場面でもなんですか?
そうです。エロシーンではなくても全てです。それでこちらもそれはおかしいし、何ヶ月か前まではOKだと言ったじゃないかとか、単純に絵として考えてもイビツ過ぎると反論したんですが、全く取り合ってもらえず、ダメなものはダメの一点張りで。
この作品の趣旨は「エロでも救える命がある」とある意味の啓蒙活動をすると言う目的もあるのに、今のメディ倫の基準では、肝心の子供達が喜んでくれている場面とか、元気に遊んでいる場面とか、新しい文房具で勉強したり絵を描いたりっていうシーンは、全部画面一杯のモザイクになってしまうという事なんです。
エロに対する風当たりが強いのは重々承知していますし、倫理団体やAVメーカーが守らなければならないラインがあるという事も理解していますが、今回のケースでそれはないんじゃないかなと、そして何よりあやふや過ぎるだろうと。
―では今回の作品はボランティア活動のシーンがモザイクだらけになってしまったんですね?
そうしないと売らせて貰えないんだから仕方ないですよ。社内には「徹底的に戦おう!」とか「発売を強行してしまえ!」という過激な論調もあったんですが、でもそれをやってしまったら一番の目的が果たせなくなる恐れがあったんです。一番の目的というのは、1本でも多く売ってお金を作って、それを全額寄付して、もっと色々な手助けをしたいという事です。
だから今回はその最大の目的の事だけを考えてこっちが折れました。決して納得したわけではないですし、今後もおかしいという訴えかけは続けますが、こればかりは「どこがゴールか?」という優先順位の問題です。手段と結果とで、こちらの我は捨てて結果だけを取りました。
本音を言えば現地の人達の表情なんかを全部映して、世間に対して「たかがエロでもこれだけの事ができる」とアピールしたかったんですけど、残念な事に今回はこうするしかありませんでした。
2008年8月15日金曜日
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